こころに潜る、こころで読む

本の風景 第1回 傾聴という愛を与え合う

私は普段、下北沢のB&Bという本屋で働いています。
でも、読書家でもなんでもなく、どちらかというと弱い私が働ける場所がそこだった、というかんじです。
そして本は私にとって、処方箋のひとつのようなものです。

本の助かるところは、頭の中でさまよっている、もやもや、ぐるぐるを言語化してくれること。
小説の中のセリフ、探求者の知恵…、それらは自分でもよくわからなかった感情を定義づけて区切りをつけてくれたり、共感して肯定してくれたりします。本は私にとってのカウンセラー、または理解者のような存在のときもあり、度々救われてきました。
そして、言葉を介して自分の輪郭が立ち上がってくると、「行動する」という次の一歩にも踏み出せます。
本はその一歩を後押ししてくれるのです。

前置きが長くなりましたが、これから私が「行動する」後押しになった本をパーソナルな話も交えながら、紹介していきたいと思います。

今回は『ラブという薬』(いとうせいこう・星野概念共著、リトルモア刊)。

精神科医の傍らミュージシャンとしても活動する星野概念さんと、活字、音楽、舞台とマルチに活躍されるいとうせいこうさんの対談集です。
実際に星野さんのカウンセリングに定期的に通っていて、元々は人になかなか弱音を吐けず、自分の中に抱え込んでしまうタイプであるといういとうさんは、

「…診察室で話していることが面白いから。星野くんと話してると、自分自身のことも、この社会のことも、どんどんクリアになっていく感覚があって、それをみんなと共有したかった。…」(10P)

という本書を作るきっかけや、帯に「対話のカタチをした薬」とあるように、対話をすること、自分の話を人に聞いてもらうことの効用を語っています。そして、私自身もカウンセリング経験者のため、話をすること、聞くことの重要性に非常に共感できたのです。

カウンセリングの先生から「人は誰かに話を聞いてもらったり、共感してもらうことで初めて感情が定義されるので、小さい頃に親や周りの人にそれをしてもらわなかった人は、大人になっても自分の気持ちを自分が理解できなかったり、表現することができないことが多い」と傾聴・共感してもらうことについて話をしてもらったことがあります。

私は元々直感型(ホロスコープでいったら風と土のエレメンツがほぼゼロ、)で、言語化、思考化がとても苦手。自分の考えを主張することより相手に合わせてうなずくことが多かったので、話をじっくり聞いてもらうこと自体、じつはカウンセリングが初めての体験で、気づきをたくさん与えてもらいました。

カウンセリングでは、言葉で相手に伝えようとしないと、自分のフィルターがいつまでたっても変わっていかない、ということも学びました。
心理学のプロに委ねると客観的にアプローチしてくれるので、それこそいとうさんがおっしゃったように、自分自身の新たな発見がめざましいのです。これは一種の快感でもありました。

もし、変化していく日々のなかで自分の軸から外れて流されてしまいがちな方や自分と対話ができていないなと感じている方がいれば、カウンセリングに行く、という行動は今の自分を変えるきっかけになるかもしれません。
本書もきっとその一歩を踏み出す言葉を与えてくれます。

最後に、引用をいとうさんの言葉からもうひとつ。

「…やっぱり傾聴って愛だよなと思った。愛してるよ、と自分が言うよりも、まずその人の話すことをとにかく聞く。逆に愛されるっていうのは、相手に自分の話を聞いてもらうことだと思うんだよ。」(42P)

西山友美/本屋B&B店長

2014年からB&Bに勤め始め、書店業務を中心に、食・くらし・旅・日本文化にまつわるイベントも(たまに)企画。マヒナファーマシーさんと「あ。わ。の月プロジェクト」のイベントを一緒に企画した縁で参加した宮崎の銀鏡神楽ツアーなど、知らない土地の空気を感じることや植物を愛でることが趣味。好きな作家は吉本ばななさん、梨木香歩さん、管啓次郎さん、文化人類学者の中沢新一さん。


2019年4月19日 

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