こころに潜る、こころで読む

12月の満月。
このコラムが公開される頃はなんと年明け直前。

もう今年一年は振り返られましたか。
本当に、今年はがんばりましたよね。
無意識にきゅっと体に力が入るような一年だったけれど、そんな年だったからこそ、一年の最後には、心も体もほっとゆるめて、自分に甘く、優しくしたい気分です。
自分を褒める言葉を自分で声をかけてあげることが、私は意外とできなくて。
一日の終わりに、「今日もおつかれさま」「ありがとう」と自分に向かって声をかけてあげる。自分にたくさんご褒美を。
個人的に来年は習慣化したいと思っていることのひとつです。

なので、今回は一年のねぎらいの気持ちも込めて、「甘く、優しい気持ちになれる本」をご紹介したいと思います。

『モロカイ島の日々——サンダルウッドの丘の家より』(山崎美弥子著・リトルモア刊 1,980円)。
本書は、ハワイ・モロカイ島で暮らすアーティスト・山崎美弥子さんが綴るエッセイです。

まずパッと印象に残るのが、表紙の絵の色。
心が温まるようなピンクのグラデーションは、眺めるだけですーっと引き込まれ、ざわついた頭の中も自然とクリアになっていくような癒やしの力を感じます。
各章の始まりに添えられたモロカイ島の海や空、花の一瞬が捉えられた風景も、どれもうっとりするような甘い色で、ただただ優しい気持ちになり、絵を見るために何度も本を開きたくなるくらい。

でも、もしかしたら、見る人によっては、違う印象を感じるかもしれません。
自由に感じていい気がします。
人それぞれの記憶や潜在意識に届くような色。
それが山崎さんの絵に心が動く理由かもしれません。

そして、それらの絵を眺めながら読む文章がまたよいのです。
エッセイでは、パートナーと出会い、船上生活を経て自らの手で建てた家で2人の娘を育て過ごした10年間の日々の記録が、まるで神話のように美しく、目に見えない大きなものに包まれているような愛のある出来事の数々として綴られています。


「一つめ。わたしたちは誰しも、夢を叶える力を絶対的にもっているということ。それは、心の中に自分だけの風景を描くことから始まります。」(2P プロローグより引用)


「ただ、在ること。なにごとにも縛られない。縛るものなどない。わたしが、「すべて」であるということを今、信じられる。」(142Pより引用)


これまで背負ってきた荷物を降ろし、思うままに軽やかに生きようとする人が増え始めている今、山崎さんの言葉から放たれる「光」や「愛」は、まるで未来からの福音のようです。
自然の音に耳を澄まし、流れに身を預け、感じるままに表現した文章がただただ美しく、心が洗われ、なんなら内側にあるピュアな自分が顔を出してきそうなくらい(笑)、じんわりと心に響きます。

それは、モロカイ島の自然から発せられるものであり、呼応する山崎さんの感性であり。
そのエッセンスを味わったあとの余韻は「甘く、優しい」。

うっとりする読書体験をぜひこの年末年始に。
どうぞ自分へのご褒美に。

今年一年、「本の風景」をご覧くださりありがとうございました。
こちらでご紹介させていただく本が、誰かにとって本来の自分や自然に戻るヒントやきっかけとなりますように。

それでは、よいお年をお迎えください。

 

今回ご紹介した『モロカイ島の日々——サンダルウッドの丘の家より』は、west mountain booksのオンラインショップでもお買い求めいただけます。
気になる方はぜひのぞいてみてください。
https://westmountainbooks.stores.jp/

西山友美/west mountain books・本屋B&Bスタッフ

 2014年からB&Bに勤め始め、書店業務を中心に、食・くらし・旅・日本文化にまつわるイベントも(たまに)企画。2019年の秋頃からゆるゆると個人の屋号で「west mountain books」を始めました。自分が感じていた生きづらさを本で救われてきた部分が多いので、そんななかで知った本や知恵をシェアできて、共感しあえるような場所を作るべく思案中です。instagram→@westmountainbooks


2020年12月28日 

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