こころに潜る、こころで読む

8月の満月です。
今回は、少し先の未来ですら予測ができない、足元がぐらぐらしがちな今の状況の中で、ひとつの指針となるような一冊をご紹介します。
気持ちを前向きに切り替えたい方、これからの生活について真剣に考えていたり、自分と向き合っている最中の方に、おすすめの本です。

『いのちは のちの いのちへ―新しい医療のかたち―』(稲葉俊郎著・アノニマ・スタジオ刊 1,760円)。
本書は、医師の稲葉俊郎さんが「個」のいのちについて語った前作『いのちを呼びさますもの』の続編。
今回は「個」のいのちを支える、「場」のいのちについて綴られています。

「場」との関わりあいは、社会と接する私たちすべてにもたらされています。
「職場」「家庭」「それ以外の場(サードプレイス)」…。
一人になりたいときに行きたい場所、ちょっと話をしたくてつい立ち寄ってしまう馴染みの場所…。みなそれぞれが「場」をお持ちだと思います。
「場」を作っている方もいれば、「場」を求めている方もいる。
これからの私たちは、どんな「場」があるといいでしょうか。どういう「場」に居たいでしょうか。

稲葉さんは、
「それらの場所は体が自然に深呼吸をする場であり、心のざわめきが落ち着き、安らぎを感じられる場でもある。」(本書66Pより引用)
と述べています。

今は、家での過ごし方、会社との関わり方、どちらにも変化が生まれ、揺らいでいます。距離の問題から「場」に集うこともなかなか難しくなりました。
ニュースでは暗い情報ばかりが流れて不安になるし、先が見えない状況で無自覚に心身が疲れてしまっている方も多いと思います。
そんな不安定な世界に生きている今、安らぎを感じられる「場」は誰にとっても必要です。

そしてその安らぎの「場」は私たち自身で作っていくものだと稲葉さんは言います。

「私たちは、これからどういう時代を生きていくのだろうか。それは与えられるものではなく、私たちがともに考え、ともに悩み、ともに心を動かして創造していくものだ。」(本書6Pより引用)

私も、押し寄せてくるものを受け止めて、腹をくくって、よりよく生きるための覚悟を決める時なのかもしれない、と感じ始めていた矢先に本書と出会い、稲葉さんの発する言葉が私の内側と共振し、心が動きました。

同じように考えている人がちゃんといる。だから私も声を発しよう、考え続けよう。そして言葉を循環させていこう。そんな気持ちになりました。
今は、そうやって自分からなにかを作り出そう、動かしていこうとしている人が、今年に生まれたひとつの大きなきっかけを発端として爆発的に増えているのかもしれません。
痛みは伴うけれど、私はきっときっといい流れが生まれる、と感じています。
稲葉さんの言葉を読むと、滞っていたものが流れ出すようなエネルギーを感じ、前向きな一歩を踏み出したくなります。

今のこの状況を一人で乗り切るのはなかなか難しい。
気持ちが弱ったときに、ありのままの自分を吐き出せる場を。
個性の違った者同士が理解しあえる場を。
様々な人がやわらかくつながれる場を。

そんな場をどうやって作ったらいいか、
本書では、
・私たちが普段「あたま」「こころ」「からだ」をどのように使っているか。
・感覚をひらくこと、感受性を育てること。
・内側を解放するためのアート、ゆるむ場。
・私たちがありのままでいられる対話とは
など、心身のこと、五感のこと、それから人との関わり方などの視点から語られています。

まさに今、読みたい一冊です。
そして、読んだみなさんとどう感じたか、シェアしてみたいです。
ぜひお読みになってみてくださいね。


※お知らせ※
私が最近始めた本のオンラインショップでも『いのちは のちの いのちへ』と稲葉さんの前作『いのちをよびさますもの』をお求めいただくことができます。
また、これまでこちらのページで紹介した本もございますので、よろしければのぞいてみてください。
https://westmountainbooks.stores.jp/

西山友美/west mountain books・本屋B&Bスタッフ

 2014年からB&Bに勤め始め、書店業務を中心に、食・くらし・旅・日本文化にまつわるイベントも(たまに)企画。2019年の秋頃からゆるゆると個人の屋号で「west mountain books」を始めました。自分が感じていた生きづらさを本で救われてきた部分が多いので、そんななかで知った本や知恵をシェアできて、共感しあえるような場所を作るべく思案中です。instagram→@westmountainbooks


2020年8月4日 

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