こころに潜る、こころで読む

みなさんは今、どんなふうに過ごしているのでしょうか。
私は知らないうちに肩、肩甲骨まわりががちがちに固くなっていて驚きました。
緊張で無意識のうちに体がこわばったり、呼吸も浅くなっていて、それくらい今は非常時なんだな、あれ、こんなことが起こる前はどんなかんじだったけな、なんて思いながら、外側からも内側からも揺さぶられ、翻弄される毎日です。

今回の文章は、3月の終わり、季節はずれの大雪の日に書いていました。
家の中で、AOKI,hayatoさんの音楽を流しながら、光野桃さんのエッセイ『感じるからだ』(だいわ文庫刊・750円)を再読しました。時折頭を上げ、外に舞う白い雪を無心に眺めては、また本に戻る…を繰り返していると、体の中から水がこぽっ、こぽっと湧いてくるような感覚に気づき、なんだか静かで豊かな時間だな、と穏やかな気持ちになっていました。

読み終わった後に改めて表紙を見たら、『感じるからだ』の副題が「からだと心にみずみずしい感覚を取り戻すレッスン」でした。さっき感じた水の音になるほど、と納得。
本書は、読んでいるうちに体の中の詰まりがとれて、なにかが巡り始めるようなパワーと優しさがあります。


筆者は、あるとき「自分の中の女が枯れてきている」と気づきます。40代も半ばにさしかかった頃。
同じ頃セラピーを受け、セラピストから「女性性が傷ついています」とも言われます。
気づいたものの、筆者が長年からだと心の齟齬やコンプレックスに葛藤してきた体験や記憶は一筋縄では消えてくれません。それは私含め誰でも然りです。手放すための行動を起こして、何度も何度も向き合って、変わって、ようやく出口が見えてくる。スタート地点に立てる。苦しくて険しい道のりだよなぁと思います。

あるとき、からだの使い方を指導する先生と出会い、これまでと違った自分のからだの反応に新鮮な驚きと興味が湧き、教えを請うことになりました。からだ再生が始まります。

「まずゆるむことを覚えましょう。からだは記憶するんです。いい記憶をたくさんからだに覚えてもらいましょう。」(64P)

「デコルテはね、感情の場所といわれているんです。〜中略〜」(84P)

野口体操やヨガを学んだ先生は、からだの視点からその人の内面や思考のクセまで見透かします。逆をいえば、からだはその人の人生を物語っているということでもありますが…。

からだを通して、自分というものをわかってもらえる安心感。
少しずつ筆者の体はひらいていき、ゆるんでいき、浅かった呼吸は深くなっていきます。

わからなかった自分のことがわかる、認めたくなかったことを認めてあげられる。

自分の人生を怖れではなく愛をもって生きられるようになるには、ここのステップを越えることが重要で、でも、ものすごく難しい。人によっては一生かけるレベルの難所だと思います(私もまさに今ここの正念場にきているというかんじです…)。

諦めずに自分と向き合って内側と外側が一致したときに出会える、本当の自分。本質の自分。傷つく前の透明な自分。

酸いも甘いも経験したからこそ見える景色は、きっとやわらかくて、温かくて、潤っているのだろうな。
読み終えたとき、前向きで、爽やかな気持ちになり、それから自分を優しく労りたくなるような1冊です。
すいすいと引きこまれるように読めますので、ぜひこの時期に。

無意識のうちにきゅっとこわばらせてしまったからだをゆるめて、ひらいて、また一緒に流れていきましょう。

 

西山友美/west mountain books・本屋B&Bスタッフ

 2014年からB&Bに勤め始め、書店業務を中心に、食・くらし・旅・日本文化にまつわるイベントも(たまに)企画。2019年の秋頃からゆるゆると個人の屋号で「west mountain books」を始めました。自分が感じていた生きづらさを本で救われてきた部分が多いので、そんななかで知った本や知恵をシェアできて、共感しあえるような場所を作るべく思案中です。instagram→@westmountainbooks


2020年4月8日 

過去の記事 >

このページのトップへ