
2025年の冬は、山陰に住む私にとってまさに閉ざされし冬であった。
特に強烈なことが起こったわけではないが、毎日が曇天の空の下で解決しようのない事柄と向き合っていたせいか外へ出かける気になれず、家で過ごすことが多かった。やがて春になり桜の頃を迎え、同時に地面からは勢いを増して成長するおびただしい数の草花。それらを目にしてホッとした。新緑の若々しい葉が陽光を浴びて風に揺れる。
そのタイミングに「赤」がやって来た。マヒナファーマシー10周年の記念に作られた「火山のコーディアル」である。イチゴの甘い香りと生姜の刺激と、さらにその奥で何種類ものハーブが溶け合うようにしてミックスされている。思考を止めて口に残る香りを探るこの感じ。これはチョコレートに合うと思った。うんと贅沢感を味わえるものにして食べてみたいと思い、本棚から昔のミセスのバックナンバーをさがすとあった。チョコレートを特集している号である。ムースオショコラ!卵白を泡だてメレンゲを作りそこへ溶かしたチョコレートを混ぜる。できたものをグラスに注ぎ冷蔵庫で待つこと2時間。出来上がったらたっぷりの火山のコーディアルをかけて、ラズベリーの果肉と、たまたまフランス帰りの友人がくれたお土産のパートドフリュイをひとかけ乗せて、なんと贅沢な愉悦のスイーツ。
おかげで「私の赤を起こす」と名付けたイベントでみなさんにも味わってもらい、それぞれの奥にしまいこんだ赤い熱をしっかり思い出させてくれる至高のスイーツとなったのである。

火山のムース・オ・ショコラ
〈材料〉
カカオ75%〜80%の市販のチョコレート 120g
牛乳 75cc
卵白 約3個分
卵黄 約2個分
グラニュー糖 25g
火山のコーディアル
ベリー類
〈作り方〉
- ボウルにチョコレートを入れレンジで20秒ずつかけながら全体の半分がとけた状態にする
- 牛乳を沸騰する直前まで温め、1のチョコレートに混ぜてかき回す。
- ボウルに卵白とグラニュー糖を入れ、よく泡だててメレンゲ状にする。ツノが立つくらいしっかり泡立てる。
- 溶いた卵黄を3のメレンゲに混ぜる
- 卵黄の入った4に2を2、回に分けて加える。その都度ゴムベラ丁寧に混ぜる
- 器にレードルで注いで小分けにする。
- 冷蔵庫で2時間冷やす。食べる少し前に冷蔵庫から取り出し
- 飾りに、火山のコーディアルを掬って乗せ、ラズベリーなどベリー類(冷凍から解凍したもの)を乗せる。小さく刻んだパートドフリュイまたは飾り用に削いだチョコを乗せる
高橋香苗
島根県在住。2004年よりDOORという店名の本屋兼ギャラリーを自宅で営む。中庭にあるけやきが作る木漏れ日が最大のアピールポイント。2018年、DOORbooksとして「忠吉語録」の刊行を機に出版を始める。2020年から書いた小説を手作りの冊子に仕上げて毎月刊行したことから、人文系の論考と小説を混ぜた円相を随時刊行している。