「スサノヲ」から旅をするIZUMO ー月を巡るたびのお話 vol.12


スサノヲがイザナギに追放されて下界に降ろされた場所は、島根と鳥取にまたがる船通山。そして、あの有名な八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)の伝説は島根の奥出雲に残されています。古代の人々は、なぜスサノヲを出雲においたのでしょう。

スサノヲを表象として紐解くことは、古代の人々が出雲をどのように見ていたかを知ることに繋がります。古事記では、伊邪那岐神(イザナギ)が黄泉国から戻って禊をしたときに、鼻(ハナ)をすすいだときに生まれた、と記されています。その荒々しさゆえ、天界を追放されますが、その後はナゼか善神へと変容します。また、日本書紀の一書(異伝)によれば、伊弉諾(イザナギ)と伊弉冉(イザナミ)の正式な神婚が成立する前に、水蛭子(ヒルコ)に続いて素盞嗚尊が生まれたとあります。本当に謎の多い神、スサノヲ。

彼とその周囲を取り巻く神々、例えば八岐の大蛇の伝説に登場する櫛稲田姫や手名椎、足名椎には、蛇の神々の気配が残されています。これは、出雲の龍蛇様や石見に色濃く残る藁蛇の信仰と何か関係があるのかもしれません。あるいはスサノヲを自然災害、天災に重ねていると考えることもできます。実際、島根の活火山である三瓶山は、十万年前から二万年前にかけて東北地方を含む広い範囲にわたって火山灰を撒き散らすほど活発な活動を続けてきました。この天災を証明しているのが、火山灰で埋もれた土地から見つかった縄文時代の森の跡です。これらは埋没林といわれ、直径1mを超えるスギを中心とする巨木が、生育時のままで地下に林立し、高さ10mを超える幹が直立状態で残存してまま発見されたのです。スサノヲはこの地を襲った災害の記憶なのでしょうか。

陰陽五行思想を元に、出雲という土地の属性をみてゆくと、そこには土地に付与されたひとつの役割が見えてきます。出雲風土記、あるいは日本書紀にのこされた伝承には、明らかにある意図を持って出雲を性格づける記載が残されています。

今年のあ。わ。の月は、『陰陽五行と聖地巡礼』シリーズとして、7月に熊野、11月に諏訪をテーマにしたお話会を予定しております。どうぞお楽しみに。
月の旅が、ふたたびはじまります。

2017.2.26
text & photo 赤阪友昭



月を巡るたびのお話 vol.12 「スサノヲ」から旅をするIZUMO

日時:2017年3月28日(水)20:00〜
出演:赤阪友昭
場所:下北沢 本屋 B&B
お問い合わせ、お申し込みは本屋B&Bまで
あ。わ。の月恒例のお話にちなんだ日本酒の振る舞い酒があります。お楽しみに。

赤阪友昭(あかさかともあき)
1963年大阪生まれ。写真家。雑誌「Switch」や「Coyote」などに写真・文を寄稿。北米海岸の先住民族と過ごした時間を一冊にまとめた写真集『The Myth - 神話の風景から - 』がある。現在は、山に残された原初の信仰や縄文文化の祭祀儀礼を取材し、定期的に東京及び各地にてスライド&トークなど精力的に講演を開催している。震災後は、福島の支援プロジェクトに関わり、被災地のランドスケープの記録撮影を続けている。
http://www.akasakatomoaki.net




火山と日本神話 -月を巡る旅のお話 vol.11


日本に暮らすわたしたちにとって、火山は切っても切りはなせない存在です。
先日からの地震に象徴されるように 自然はわたしたちの意思とは全く関係のないところで常に活動を続けています。そして、昔はわたしたちはそのことをよく分かっていました。では今のわたしたちは、そのことをよく分かっているでしょうか?

十年以上もの昔、アラスカに暮らすインディアンの友人と一緒に熊本から鹿児島へと旅をしたことがあります。訪れる土地のランドスケープと物語に触れながら彼が察知したことはとても衝撃的な内容であると共に、とても理解しうることでした。おそらくは縄文時代前期のこと、今の鹿児島湾にとても高い山がありました。そして、それは火山でした。あるとき、山は大噴火を起こします。おびただしい噴火と地震は世界を一変させてしまいます。空を覆う噴煙は太陽を遮り、火砕流が村を襲いました。火口には噴火に伴う稲妻が走り、山は木っ端微塵となり、今の鹿児島湾ができました。日本の神話、特に古事記をよく見ていくとこの日本の成り立ち、いわゆる創世神話が火山の物語であることが見えてきます。イザナミもイザナミから生まれたカグツチも火山の物語です。もう少し古い時代に遡れば邪馬台国の卑弥呼も火の神でした。太平洋を取り囲む土地、アラスカ、カナダ、北米西海岸、メキシコ、南米のエクアドル、チリ、ハワイ、フィリピン、マレーシア、台湾、中国、琉球である沖縄、そして日本。あらゆゆる場所に火山があり、火の神が祀られています。わたしたちはみな火の神により土地を与えられ、火の神との約束事の中に生かされてきた命の兄弟姉妹です。

2016.4.22
text & photo 赤阪友昭



月を巡る旅のお話 vol.11
火山と日本神話

日時:2016年5月25日(水)20:00〜
出演:赤阪友昭、小島ケイタニーラブ
場所:下北沢 本屋 B&B
お問い合わせ、お申し込みは本屋B&Bまで → 本屋B&B
あ。わ。の月恒例のお話しにちなんだ日本酒の振る舞い酒があります。お楽しみに。

赤阪友昭(あかさかともあき)
1963年大阪生まれ。写真家。雑誌「Switch」や「Coyote」などに写真・文を寄稿。北米海岸の先住民族と過ごした時間を一冊にまとめた写真集『The Myth - 神話の風景から - 』がある。現在は、山に残された原初の信仰や縄文文化の祭祀儀礼を取材し、定期的に東京及び各地にてスライド&トークなど精力的に講演を開催している。震災後は、福島の支援プロジェクトに関わり、被災地のランドスケープの記録撮影を続けている。 
http://www.akasakatomoaki.net

小島ケイタニーラブ(こじまけいたにーらぶ)
1980年生まれ。ミュージシャン。2009年、バンド「ANIMA」としてデビュー。文学性の高い歌詞を特徴とし、朗読や舞台とのコラボレーションも多数。2011年より、朗読劇『銀河鉄道の夜』 (作家・古川日出男、詩人・管啓次郎、翻訳家・柴田元幸、小島ケイタニーラブ) としての活動を開始し、翌12年には朗読劇の主題歌「フォークダンス」を収録する弾き語り作品『小島敬太』(WEATHER/HEADZ)を発表。2013年には、東京芸術劇場での〈リミニ・プロトコル〉日本公演のサウンドデザインをゴンドウトモヒコ(pupa)と共に担当するなど活動の幅を広げている。2014年からRainy Day Bookstore & Cafe にて初の定期イベント「ラブナイト」を開始する。
http://www.keitaney.com

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フォースの実践 ~ 祈りの形とその力 ~ @ 松江

昨年、二つのフィールドワークの旅をしました。ひとつは、11月に島根県松江市の佐太神社で行われた神等去出神事。旧暦10月に出雲に集う神々を祀る神在祭のクロージングであるこの神事は、陰陽五行思想に沿ってみれば陰の極から陽の季節への転換を司る大切な儀礼となります。そして、ふたつめは12月に宮崎県西都市の銀鏡神社で執り行われた銀鏡神楽。イノシシの生首を奉納し、星の神々の降臨を請う舞が一晩中徹夜で続きます。この二つのフィールドワークから見えてきた「祈りの形と力」について話をしてみたいと思います。さらに今回は、昨年の神等去出神事を陰の神事としたら対極の陽の信じである佐太神社の神在裏月祭までフィールドワークしてみます。日本のいろんな場所で行われている一連の神事は、常に天と大地の和合を願うものであり、それはまるで<フォース>(そう、あの映画のスターウォーズで出てくる架空のエネルギー場のこと!)の実践の場と云ってもいいかもしれません。

「祈り」は、ある意味で呪術です。その形式あるいは技を極めながらも心の純粋性を保つことではじめて成立するものだと言えるでしょう。われわれは人間ですから、いろんな心を持っています。畏れや慢心は常のことです。それでも、ある一瞬、究極の自分に集中することで自らの中に存在する宇宙と繋がることもあります。ご紹介するいくつかの祭祀儀礼に関わる人々にとって最も大切なことは、宇宙と繋がることでこの星に生きるあらゆる命を調和に導くこと、それだけです。そのためにはあらゆる謀(はかりごと)を手放して、究極の純粋性の中で行う必要があります。そこでは、<フォース> が実践されているのです。日本には <祈り> という形式において究極の純粋性が未だ存在しています。今回の旅は、そのことを深く再認識させてくれました。今回の松江で開催する《あ。わ。の月》ではフィールドワークから見てきたこれらの祈りのエネルギーが躍動する場のことについて少し詳しく分かち合いたいと考えています。ぜひご参加ください。

今回のあ。わ。の月では、佐太神社の神在裏月祭をフィールドワークさせていただきたいと思います。昨年11月25日に行われた神等去出神事と対と思われるこのお祭りは、11月の祭りが陰の祭りだとすると、5月の祭りは陽の祭りとなり、二つを合わせることで陰陽の和合となります。ご興味のある方は参列されてみてはいかがでしょうか?

2016年5月20日(金)予定
『神在祭裏月祭』
佐太神社境内集合(松江市鹿島町)自由参加

2016年5月22日 (日)18:30〜
『フォースの実践 ~ 祈りの形とその力 ~ @ 松江』
赤阪友昭 スライド&トーク
DOOR book store(松江市上乃木)
入場料1,800円(要予約/お茶とお菓子付き)

お問い合わせ:DOOR book store
TEL/090-8713-0852
E-mail/doorst.2134@gmail.com




私見、お伊勢さんを巡る 〜 アマテラスと蛇 〜 - 月を巡る旅のお話 vol.10


アマテラスといえば太陽神のことですが、そもそも太陽神とはいかなるカミサマなのでしょう?太陽がカミサマとなる理由を考えれば、およそ生命を維持するために必要不可欠な存在であるからと簡単に答えることができます。太陽の存在はあまりにも当然のことなので、神話で取り上げられるのは「太陽の消失」にまつわるものがほとんどです。世界的に残されている「太陽の消失」とは、冬至、あるいは日食を基礎にした神話や伝承がほとんどです。しかし、どうも日本での事情は異なるようです。

古事記の中で、日本の太陽神であるアマテラスは天の岩戸に隠れますが、この神話の背景には九州で起きたであろう超巨大火山の噴火があると考えられています。この大噴火によって九州から西日本にかけて存在したはずの先史時代から縄文初期の文明は火山灰の下に埋もれてしまいました。つまり、遥か7,000年以上前に起こった大噴火の記憶を携えた人々が、古事記にアマテラスを登場させたことになるのです。もし、そうであればアマテラスは遥か古代に存在した神である可能性もあります。いったい、アマテラスはどこからやってきたのでしょうか?

縄文時代に既にその存在の基礎が育まれていたとしたら、それはどのような信仰だったのでしょう。以前に縄文のビーナスである土偶を調べた時に頭の後ろには蛇が描かれていました。縄文土器の特徴である縄の文様はそのまま蛇の文様と考えられます。蛇はあらゆるエネルギーを起動するために必要な表象あるいは言霊だったのかもしれません。これまで様々なフィールドワークで実感してきたのは、この地球上のエネルギーを起動し駆動するために宇宙的なエネルギーとリンクする必要があるということでした。簡単に言い換えると「天と地を和合する」ことでした。おそらく、どの神事も神楽もすべてそのことのために執り行われていると言っていいかもしれません。今までのフィールドワークの経験から、そこにはいつも蛇、あるいは龍蛇の気配がありました。

今回は、日本で最も崇敬されている神であるアマテラスを祀る伊勢神宮に焦点を当てて考えてみたいと思います。できることならフィールドワークをしてみたいと思うのですが、なかなかハードルが高そうなので、まずは陰陽五行の視点から伊勢神宮の祭祀儀礼やその成り立ちを繙いてみようと思います。アマテラスと蛇、天地の和合を取る呪法の中に深い繋がりが見えてくるのかもしれません。

2016.2.23
text & photo 赤阪友昭



月を巡る旅のお話 vol. 10
私見、お伊勢さんを巡る 〜 アマテラスと蛇 〜

日時:2016年3月23日(水) 20:00〜
出演:赤阪友昭、小島ケイタニーラブ
場所:下北沢 本屋 B&B
お問い合わせ、お申し込みは本屋B&Bまで → 本屋B&B

赤阪友昭(あかさかともあき)
1963年大阪生まれ。写真家。雑誌『Switch』や『Coyote』などに写真・文章を寄稿。北米海岸の先住民族と過ごした時間を一冊にまとめた写真集『The Myth -神話の風景から-』がある。現在は、山に残された原初の信仰、縄文文化や祭祀儀礼を取材。また、福島県立博物館のプロジェクトに関わり、南相馬を拠点に被災地の撮影を続けている。
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小島ケイタニーラブ(こじまけいたにーらぶ)
1980年生まれ。ミュージシャン。2009年、バンド「ANIMA」としてデビュー。文学性の高い歌詞を特徴とし、朗読や舞台とのコラボレーションも多数。2011年より、朗読劇『銀河鉄道の夜』 (作家・古川日出男、詩人・管啓次郎、翻訳家・柴田元幸、小島ケイタニーラブ) としての活動を開始し、翌12年には朗読劇の主題歌「フォークダンス」を収録する弾き語り作品『小島敬太』(WEATHER/HEADZ)を発表。2013年には、東京芸術劇場での〈リミニ・プロトコル〉日本公演のサウンドデザインをゴンドウトモヒコ(pupa)と共に担当するなど活動の幅を広げている。2014年からRainy Day Bookstore & Cafe にて初の定期イベント「ラブナイト」を開始する。
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「あ。わ。の月」プロジェクト
月をキーワードとして、森羅万象の世界へ足を踏み入れようというプロジェクトです。「あ」は「はじまり」、「わ」は「おわり」のこと。「月」を知ることは命の「はじまり」と「おわり」と「はじまり」を知ることです。




フォースの実践 ~ 祈りの形とその力 ~ - 月を巡る旅のお話 vol.09


ここ2ヶ月の間に二つのフィールドワークの旅をしました。ひとつは、11月に島根県松江市の佐太神社で行われた神等去出神事。旧暦10月に出雲に集う神々を祀る神在祭のクロージングであるこの神事は、陰陽五行思想に沿ってみれば陰の極から陽の季節への転換を司る大切な儀礼となります。そして、ふたつめは12月に宮崎県西都市の銀鏡神社で執り行われた銀鏡神楽です。イノシシの生首を奉納し、星の神々の降臨を請う舞が一晩中徹夜で続きます。今回は、この二つのフィールドワークから見えてきた「祈りの形と力」についてお話をしてみたいと思います。

<祈り> は、独特の感性と経験則に導かれて成立したある形式に則って行われます。世界中で、あらゆる教会や神殿、神社仏閣、祈祷の場、シャーマニズムなどの信仰において様々な形式に基づいた祈りが日々行われています。以前、国の無形重要文化財に指定された神懸かりで有名な神楽を見たことがあります。数年に一度しか行われることのない神楽を見ようと、多くの宗教学や文化人類学の学者、そしてカメラマンが舞殿の最前列を占拠していました。地元の人たちは舞殿には入らず外のスクリーンで神楽を見物していました。どうみても神様ではなくて観客席を向いた形で行われている神楽に違和感を感じて後ろから眺めていました。もったいぶった演目の説明のせいか式次第の時間はどんどんずれ込み、神懸かりの舞の時間には夜が明けてしまっていました。結局、神様はやって来ることはなく神楽は終わりました。神懸かりがないまま神楽が終わったのは初めてのことでした。舞人たちは少なからずショックを受けていたようですが、僕には当然のように思えました。夜に神楽を舞うことの意味を彼らは忘れてしまったのでしょうか。 神様が降りてくるのは夜の闇の中だということを。

祈りは、ある意味で呪術です。その形あるいは技を極めながらも心の純粋性を保つことではじめて成立するものだと言えるでしょう。しかし、皆人間ですから、いろんな心を持っています。畏れや慢心は常のことです。それでも、ある一瞬、究極の自分に集中することで宇宙的な存在と繋がることがあります。例えば、見ず知らずの人が線路に落ちそうになったときに、咄嗟に手を伸ばし助けようとする瞬間です。私たちは、無意識下では互いの命が繋がって存在していることを知っています。映画 <スターウォーズ> に登場する<フォース> とは、宇宙の根源にあるあらゆる生命の一体性と調和が生み出すエネルギーの場だと理解していいと思います。 佐太神社の神事では、祝詞は無言のうちに唱えられるため、私たちは聞くことができません。祭祀の場で執り行われる儀礼は神様にのみ捧げられ、私たちは目撃者あるいは証人としてそこに立ち会うのみです。また、銀鏡の神楽では星への祈りを捧げて一晩中神楽を舞います。神楽を舞う舞殿では宇宙の神々が降臨 し、祝子(ほうり)と呼ばれる舞人たちに憑依し凄まじいばかりのエネルギーを放ちながら粛々と演目を舞い進めてゆきます。深夜に松明の明かりだけで行われる島根の神事も、徹夜で舞う宮崎の神楽も、観光客が見にくることはありません。この二つの祭祀儀礼に関わる人々が共に大切にしていることは、宇宙と繋がることでこの星に生きるあらゆる命を調和に導くこと、それだけです。そのために心はあらゆる謀(はかりごと)を手放して、究極の純粋性の中に立つ必要があります。今回の旅で思ったことは、各地でひっそりと行われている <祈り> が、今の日本の空間を支えているのかもしれない、ということです。それは私たちひとりひとりにも通底しています。日々のひとつひとつの小さな行為の後に備わる心の在り様が、そこに生み出されるエネルギーの質を決定づける。それはまさしく <フォース> の実践です。今月のあ。わ。の月ではそんな二つのフィールドワークで見てきたことを皆さんと分かち合いたいと思います。

2015.12.25
text & photo 赤阪友昭



月を巡る旅のお話 vol. 09
フォースの実践 ~ 祈りの形とその力 ~

日時:2016年1月25日(月) 20:00〜
出演:赤阪友昭、小島ケイタニーラブ
場所:下北沢 本屋 B&B
お問い合わせ、お申し込みは本屋B&Bまで
本屋B&B

*銀鏡神楽にちなんだ振る舞い酒をご用意しております。お楽しみに。

赤阪友昭(あかさかともあき)
1963年大阪生まれ。写真家。雑誌『Switch』や『Coyote』などに写真・文章を寄稿。北米海岸の先住民族と過ごした時間を一冊にまとめた写真集『The Myth -神話の風景から-』がある。現在は、山に残された原初の信仰、縄文文化や祭祀儀礼を取材。また、福島県立博物館のプロジェクトに関わり、南相馬を拠点に被災地の撮影を続けている。
http://www.akasakatomoaki.net

小島ケイタニーラブ(こじまけいたにーらぶ)
1980年生まれ。ミュージシャン。2009年、バンド「ANIMA」としてデビュー。文学性の高い歌詞を特徴とし、朗読や舞台とのコラボレーションも多数。2011年より、朗読劇『銀河鉄道の夜』 (作家・古川日出男、詩人・管啓次郎、翻訳家・柴田元幸、小島ケイタニーラブ) としての活動を開始し、翌12年には朗読劇の主題歌「フォークダンス」を収録する弾き語り作品『小島敬太』(WEATHER/HEADZ)を発表。2013年には、東京芸術劇場での〈リミニ・プロトコル〉日本公演のサウンドデザインをゴンドウトモヒコ(pupa)と共に担当するなど活動の幅を広げている。2014年からRainy Day Bookstore & Cafe にて初の定期イベント「ラブナイト」を開始する。
http://www.keitaney.com

「あ。わ。の月」プロジェクト
月をキーワードとして、森羅万象の世界へ足を踏み入れようというプロジェクトです。「あ」は「はじまり」、「わ」は「おわり」のこと。「月」を知ることは命の「はじまり」と「おわり」と「はじまり」を知ることです。





隔月新月に更新しているあ。わ。の月からのお知らせです。
今年のあ。わ。の月は、星とつながる神さまのお話が続いています。 その中で、古代から受け継がれ星の神さまにつながる神楽が残る、宮崎の銀鏡(しろみ)神楽のお話がとても印象的でした。 その神楽を生で見て体験したいといった反応をたくさんいただいて 12月実際に見に行くフィールドワーク編「星の舞、銀鏡神楽を見に行く!」を企画しました。 今回は、その企画にちなんで、神楽とは、そして神楽の奥深い世界を知ることができるお話会を 10月、11月と2回にわたって開催いたします。 第1回目の今回は、神楽の基礎や銀鏡神楽の特徴まで写真や音でご紹介しながら、 日本に残る古(いにしえ)の記憶を知っていただく回になります。 自然や土地とつながる神楽を知ることで、私たちが普段忘れていた感覚が呼び覚まされるかもしれません。 当日は料理研究家のマツーラユタカさんによる星をテーマにした軽食をお楽しみいただく予定です。 古代の祈りの世界にふれてみませんか。 ぜひ、お気軽にご参加ください。

あ。わ。の月 赤阪友昭
「基礎から学ぶ伝統芸能「神楽」~前編 星の神・宿神に祈る舞 - 銀鏡神楽~」
お問い合わせ、お申し込みはこちらまで。
本屋 B&B(東京・下北沢)
http://bookandbeer.com/event/20151019_shiromikagura1/
日時:10月19日(月) 20:00〜22:00(19:30開場)
参加料:2,000yen(フード付き)+ 500yen / 1drink
協力:マツーラユタカ(つむぎや)
<予告>
「基礎から学ぶ伝統芸能「神楽」~ 後編 闇と星、銀鏡神楽の深層に潜る〜」
ゲスト 鶴岡真弓
(多摩美術大学 芸術人類学研究所所長)
11月14日(土)19 : 00 ~

詳細

あ。わ。の月プロジェクト 赤阪友昭
「基礎から学ぶ伝統芸能「神楽」~前編 星の神・宿神に祈る舞 - 銀鏡神楽~」

日本の神話を旅する写真家・赤阪友昭さんが、ミュージシャンの小島ケイタニーラブさんと共に隔月新月に開催している「月を巡る旅のお話」。こちらのスピンオフイベントとして、日本の伝統芸能「神楽」をテーマにしたお話し会を2回にわたって行うことになりました。お話のメインとなるのは、国の重要無形民俗文化財に指定されている宮崎の山奥深くに残る伝統芸能「銀鏡(しろみ)神楽」です。
※このお話し会のフィールドワーク編として、12月には銀鏡神楽を実際に見に行くツアーも企画しています。
https://www.facebook.com/awanotsuki?ref=bookmarks

第1回目の今回は、神楽の基礎や銀鏡神楽の特徴まで写真や音でご紹介しながら、日本に残る古(いにしえ)の記憶を知っていただく回になります。自然や土地とつながる神楽を知ることで、私たちが普段忘れていた感覚が呼び覚まされるかもしれません。
当日は料理研究家のマツーラユタカさんによる星をテーマにした軽食をお楽しみいただく予定です。
また、お話し会にあわせて赤阪さんより神楽をわかりやすく知るためにお作りいただいたテキスト冊子(1000円)を当日販売いたします。こちらをお手元に置いていただくとより理解が深まりますので、ぜひお買い求めください。
以下、赤阪さんよりいただいた2回にわたるお話し会の導入です。ぜひご一読ください。



九州の奥山深くに残された集落、宮崎県西都市銀鏡。毎年12月になると、銀鏡神社では古代より連綿と受け継がれて来た伝統芸能「銀鏡神楽」が舞われています。銀鏡神楽は、宮崎県内の神楽で初めて国の重要無形民俗文化財(登録名は「米良神楽」)に指定されており、高千穂神楽や椎葉神楽などとともに宮崎県を代表する神楽の一つに数えられています。

銀鏡神楽の特徴は、星の神に祈りを捧げるところにあります。例えば、祭礼期間中の13日の夕刻には式一番「星の舞」が舞われます。この舞により銀鏡の地主神である「宿神」が降臨するといいます。「宿神」の出現を受けて、翌14日の夜8時頃から15日の昼過ぎまで、全部で三十三番の舞を奉納するのです。かつて、古代の人々は目の前に立ち現れる自然の現象を祈りの対象としてきました。それはある意味、過去から現在までの世界を観ることでした。しかし、「星」という遥か遠くに見るべきものを手に入れた人々は「未来」という時間軸を手に入れます。それは暦をはじめとして未来を予測する占星術へと発展していくことになります。厳しい自然の中で生きて来た私たちの祖先にとって、星は命を繋ぐことへの視座と希望を与えてくれたのかもしれません。そんな古代の祈りを継承してきた伝統のひとつがこの銀鏡神楽なのです。

いまや、町に暮らす私たちの空からは星が見えなくなってしまいました。でも、たとえ見えなくとも私たちの頭の上には満天に星々が輝いているのです。そして、私たちの命の行途を司るのは、実はそんな星たちなのかもしれません。銀鏡神楽では夜を徹して、満天の星空の下で星への祈り捧げます。そんな時間と空間を知ることで、私たちの古代の記憶が目を覚ますかもしれません。



お話し会は10月と11月の2回に分けて予定しています。どなたでもご参加いただけますので、ツアーには興味があるけど行けない!という方も、ぜひご参加ください。

お問い合わせ、お申し込みはこちらまで。
本屋 B&B(東京・下北沢)
http://bookandbeer.com/event/

日時:10月19日(月) 20:00〜22:00(19:30開場)
参加料:2,000yen(フード付き)+ 500yen / 1drink
協力:マツーラユタカ(つむぎや)

<予告>
「基礎から学ぶ伝統芸能「神楽」~後編 闇と星、銀鏡神楽の深層に潜る」
ゲスト 鶴岡真弓(多摩美術大学 芸術人類学研究所所長)
11月14日(土)19 : 00 ~

赤阪友昭 プロフィール
1963年大阪生まれ。写真家。雑誌「Switch」や「Coyote」などに写真・文を寄稿。北米海岸の先住民族と過ごした時間を一冊にまとめた写真集『The Myth - 神話の風景から - 』がある。現在は、山に残された原初の信仰や縄文文化の祭祀儀礼を取材し、定期的に東京及び各地にてスライド&トークなど精力的に講演を開催している。震災後は、福島の支援プロジェクトに関わり、被災地のランドスケープの記録撮影を続けている。
http://www.akasakatomoaki.net/

あ。わ。の月プロジェクト
月をキーワードとして、森羅万象の世界へ足を踏み入れようというプロジェクトです。「あ」は「はじまり」、「わ」は「おわり」のこと。「月」を知ることは命の「はじまり」と「おわり」と「はじまり」を知ることです。隔月新月の夜に、お話と写真と音楽でお届けする会を開催しています。
http://www.mahinapharmacy.com/awanotsuki.html





星の巡りと陰陽道 水編 - 月を巡る旅のお話 vol.08


福井の若狭に「鵜の瀬」という場所があって、ずいぶんと昔にそこで「お水送り」という儀礼を観たことがあります。白装束に身を包んだ僧侶や神官らが松明を掲げて鵜の瀬まで行き、神宮寺の住職がお水送りの祈祷文を読み上げると水は瀬を流れる遠敷川に注がれます。送られた水の行く先は奈良の東大寺にある若狭井、別名を閼伽井(あかい)。水は地下の水脈を潜り抜けて10日でこの二月堂の井戸に届くといわれています。この井戸の湧水は「閼伽水」と呼ばれ、清浄なる聖水、御香水として二月堂のご本尊にお供えされます。この儀式が、大和の地に春を告げる「二月堂のお水取り」であり永きに渡り続いてきたものです。その起源を調べてみるといくつか理由があるようなのですが、それにしても日本海から奈良へ水を送るという神事は、いにしえの人々が土地を遥か上空から俯瞰してみることのできる眼を持っていたことを表します。

春日大社のおん祭りにジブリの高畑監督とご一緒したときのことです。その主祭神である若宮の神様についての話になりました。「若(わか)」や「閼伽(あか)」は水を意味するようだし、アイヌの言葉では清らかな水のことを「ワッカ」という。ついては、若宮の「若」とは「水の神様」のことではないか、と質問してみました。「もちろんそうだし、ラテン語系の「AQUA」や「AGUA」、「ACQUA」など全て水ですからね、、、」という答えが返ってきました。地球の裏側のように離れた土地でありながら同じ基層文化を共有していることを、まるで当たり前のような話し振りでした。西方との繋がりが色濃く残されている祇園祭や諏訪大社の御柱祭りなど、日本の残されているお祭りやご神事を巡っていると、今の私たちには想像もつかないほど遠く星々からの視座、あるいは宇宙像を持っていることに驚かされます。

今回は、その原点のひとつとして陰陽五行思想を見てみようと思います。入口は陰陽道。かの安倍晴明で有名ですね。現在の私たちが生きるこの世界は、宇宙の根源からはじまり、天地が別れ、神々が誕生し、様々な生き物がこの大地に現れました。こうした自然の営みを理解するひとつの技術理論体系として、日本では5世紀頃から陰陽五行思想が伝わり発展してきました。その中でも特に大切だったのは暦法、つまり暦を作ることでした。暦を知るということは、これまでの日々の暮らしに時間という空間軸を与えることであり、現在と過去しか存在しなかった世界に「未来」という軸をもたらしたのです。さきの「お水取り」も、御香水を使って墨を擦り暦を作るということが最重要目的だったと言われています。それは、自然界の霊的な力を暦に与えるための呪術だったのかもしれません。今回は、特に「水」の世界に注目しながら、水を司る神社や聖地を訪ねながら陰陽五行、そして星の巡りゆく世界へと漂ってみたいと思います。

2015.8.14
text & photo 赤阪友昭



月を巡る旅のお話 vol. 08
星の巡りと陰陽道 水編

日時:9月13日(日) 19:00〜21:00
出演:赤阪友昭、小島ケイタニーラブ
場所:下北沢 本屋 B&B
お問い合わせ、お申し込みは本屋B&Bまで
本屋B&B

※お話にちなんで、今回は、福井の日本酒を振る舞い酒でご用意しております。当日は限定で、マヒナファーマシーのハーブコーディアルがB&Bのドリンクメニューに登場する予定です。

赤阪友昭(あかさかともあき)
1963年大阪生まれ。写真家。雑誌『Switch』や『Coyote』などに写真・文章を寄稿。北米海岸の先住民族と過ごした時間を一冊にまとめた写真集『The Myth -神話の風景から-』がある。現在は、山に残された原初の信仰、縄文文化や祭祀儀礼を取材。また、福島県立博物館のプロジェクトに関わり、南相馬を拠点に被災地の撮影を続けている。
http://www.akasakatomoaki.net

小島ケイタニーラブ(こじまけいたにーらぶ)
1980年生まれ。ミュージシャン。2009年、バンド「ANIMA」としてデビュー。文学性の高い歌詞を特徴とし、朗読や舞台とのコラボレーションも多数。2011年より、朗読劇『銀河鉄道の夜』 (作家・古川日出男、詩人・管啓次郎、翻訳家・柴田元幸、小島ケイタニーラブ) としての活動を開始し、翌12年には朗読劇の主題歌「フォークダンス」を収録する弾き語り作品『小島敬太』(WEATHER/HEADZ)を発表。2013年には、東京芸術劇場での〈リミニ・プロトコル〉日本公演のサウンドデザインをゴンドウトモヒコ(pupa)と共に担当するなど活動の幅を広げている。2014年からRainy Day Bookstore & Cafe にて初の定期イベント「ラブナイト」を開始する。
http://www.keitaney.com

「あ。わ。の月」プロジェクト
月をキーワードとして、森羅万象の世界へ足を踏み入れようというプロジェクトです。「あ」は「はじまり」、「わ」は「おわり」のこと。「月」を知ることは命の「はじまり」と「おわり」と「はじまり」を知ることです。





月を巡る旅のお話 vol. 07 ー 星の巡りと日本の祭り ー


数年前、スコットランドの辺境を旅したことがあります。アウターヘブリディーズ諸島と呼ばれるその場所には、まだ手つかずの環状列石いわゆるストーンサークルや、スタンディングストーンと呼ばれる立石群が残っています。

島の北から南にむけて移動しながら撮影を続けて、10月末のハローウィンの日にたまたまカラナイスというスコットランドの文化財に指定されている遺跡に辿りつきました。その遺跡は、およそ80メートルにわたって東西南北に立石が並び石の高さは最も高いもので5メートルほどもある見事な環状列石で、まわりは低いけれども意図的に石垣が囲み守られていました。遺跡を取り囲む石垣の外を回っていると、南側に大きな磐座があることに気がつきました。もうすぐ日暮れの時間だったので、そのまま磐座に座り、夜を待つことにしました。夜が更けるにつれ空を星々が埋めてゆきます。磐座から環状列石を見下ろすと、南から北に石がきれいに並び、その先の空には北極星が輝いていました。すると、いきなりひとつのイメージが脳裏に飛び込んできました。古代の人々がその磐座の上で北極星へむけて祈りを捧げている。彼らは星のエネルギーを地上に降ろすために何か儀式をしているようなのです。このイメージが教えてくれたのは、環状列石はある種の装置であって、大切なことはそれを使って星とこの磐座がある地上を繋ぐ、ということでした。

そのことに気がついてから日本のお祭りを見直すといろんなことが見えてきました。これまで十年以上も通っていた島根の神楽を蛇のカミサマの神楽だと思っていたのが、実はその中には星とつながるための儀礼がいくつも盛り込まれていることや、宮崎の宿神の神楽の中に潜む星との関係をひも解くためにこれまで避けてきた陰陽五行思想に手をつけてみると日本の祭祀儀礼のいたるところに星の呪術が施されていることに気がつくのです。

自然とともに生きるということは、この宇宙の理とともに生きることだと言われたように気がしています。それはけっして大げさな話ではなくて、たとえば五穀豊穣を願う、それは天体を知り暦を作ることでその願いをかなえることができます。それは、宇宙の理をこの地上に降ろすこと、星への祈りの後戸にはあらゆる命の<生>への祈りが込められています。

7月の会では、星を巡りながら日本の祭祀儀礼とのつながりをお話したいと思います。

2015.6.16
text & photo 赤阪友昭



月を巡る旅のお話 vol. 07
星の巡りと日本の祭り

日時:7月17日(金) 20:00〜22:00
出演:赤阪友昭、小島ケイタニーラブ
場所:下北沢 本屋 B&B
お問い合わせ、お申し込みは本屋B&Bまで
http://bookandbeer.com/

赤阪友昭(あかさかともあき)
1963年大阪生まれ。写真家。雑誌『Switch』や『Coyote』などに写真・文章を寄稿。北米海岸の先住民族と過ごした時間を一冊にまとめた写真集『The Myth -神話の風景から-』がある。現在は、山に残された原初の信仰、縄文文化や祭祀儀礼を取材。また、福島県立博物館のプロジェクトに関わり、南相馬を拠点に被災地の撮影を続けている。
http://www.akasakatomoaki.net

小島ケイタニーラブ(こじまけいたにーらぶ)
1980年生まれ。ミュージシャン。2009年、バンド「ANIMA」としてデビュー。文学性の高い歌詞を特徴とし、朗読や舞台とのコラボレーションも多数。2011年より、朗読劇『銀河鉄道の夜』 (作家・古川日出男、詩人・管啓次郎、翻訳家・柴田元幸、小島ケイタニーラブ) としての活動を開始し、翌12年には朗読劇の主題歌「フォークダンス」を収録する弾き語り作品『小島敬太』(WEATHER/HEADZ)を発表。2013年には、東京芸術劇場での〈リミニ・プロトコル〉日本公演のサウンドデザインをゴンドウトモヒコ(pupa)と共に担当するなど活動の幅を広げている。2014年からRainy Day Bookstore & Cafe にて初の定期イベント「ラブナイト」を開始する。
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「あ。わ。の月」プロジェクト
月をキーワードとして、森羅万象の世界へ足を踏み入れようというプロジェクトです。「あ」は「はじまり」、「わ」は「おわり」のこと。「月」を知ることは命の「はじまり」と「おわり」と「はじまり」を知ることです。








月を巡る旅のお話 vol. 06

ー 星の神様と宿の神 ー



昔むかし、最初に神様がこの世界を創ったときには、太陽が照らす明るい光の時間しかありませんでした。動き続けた動物や人間は、やがてくたくたに疲れて動かなくなってしまいます。「これではいけない。休ませなければ」と、神様は大きな幕で天を覆い「闇」を作ってあげることにしました。休息の時間、夜のはじまりです。しかし、神様は天幕の下で生きる人間たちのことが気になって仕方ありません。それで持っていた針で天幕に少しずつ穴を開けて下の世界の覗き見るようになったそうです。星はそうやってできたというお話。― だから、星の向こうには神様がいる。夜は神様がじっと私たちを見ている時間なんだ ― と、遊牧民の友人が教えてくれました。

ユーラシア大陸に暮らす遊牧民たちと同じように、私たちが暮らす日本でも、夜は神様がお出ましになる時間だと言われています。神社で行われる夜の儀礼や日本の各地に残る夜神楽には、そんな信仰がしっかりと残されています。例えば、奈良の春日大社で平安時代から続くと伝えられる「おん祭り」では、毎年12月の深夜零時に若宮様という神様が神輿に乗せられて社を出て、丸一日かけた奉納芸能を受けた後、きっかり24時間後の翌日の深夜零時に再び社に戻るという祭礼が行われています。また、島根の山奥の集落では、踊りを舞う人に神様が憑依してお告げをする夜神楽が残っています。このとき、神様がやってくるのは必ず夜と決まっています。

とくに、月が姿を消す新月の闇夜は神様にとって大切な時間です。闇が深いほどに、天には星々が燦然と輝きを増してあらわれます。太陽が支配する光の世界を「目に見える世界」とするならば、星が支配する闇の世界は「目に見えない世界」です。そんな「目には見えない世界」の時間をかりて、人々は神様に祈りを捧げるために夜を徹して神楽を舞います。宮崎県のある集落の神楽では、「宿神(しゅくじん)」という神様が出てきます。「宿」とは、星の宿る場所のことを指すので、さしずめ星の神様ということでしょうか。実はこの宿の神様にはたくさんの謎が隠されているようです。いにしえの日本の人たちが自然の世界に感じていた精霊の存在と、ひょっとすると繋がっていくのかもしれません。これから少し時間をかけて星の神様の宿神さんを訪ねてみようと思います。

こどもの頃に誰に教えられたことはありませんか?ー流れ星が流れているうちに願い事を三回唱えれば、その願いは叶うーと。最近ではそんなことも少なくなったかもしれませんね。でも、ちょっと思い出してみたいと思うのです、わたしたちが星の神様や精霊と一緒に生きてきた頃のこと、そして、祈りを捧げ、見守られてきたことを。星の見えない都会の夜空も、実は満天の星空だということを。

5月の会では、そんな星の神様にまつわるお話をしてみようと思います。

2015.4.19
text & photo 赤阪友昭



月を巡る旅のお話 vol. 06
星の神様と宿の神

日時:5月18日(月) 20:00〜22:00
出演:赤阪友昭、小島ケイタニーラブ
場所:下北沢 本屋 B&B
お問い合わせ、お申し込みは本屋B&Bまで
http://bookandbeer.com/

赤阪友昭(あかさかともあき)
1963年大阪生まれ。写真家。雑誌『Switch』や『Coyote』などに写真・文章を寄稿。北米海岸の先住民族と過ごした時間を一冊にまとめた写真集『The Myth -神話の風景から-』がある。現在は、山に残された原初の信仰、縄文文化や祭祀儀礼を取材。また、福島県立博物館のプロジェクトに関わり、南相馬を拠点に被災地の撮影を続けている。
http://www.akasakatomoaki.net

小島ケイタニーラブ(こじまけいたにーらぶ)
1980年生まれ。ミュージシャン。2009年、バンド「ANIMA」としてデビュー。文学性の高い歌詞を特徴とし、朗読や舞台とのコラボレーションも多数。2011年より、朗読劇『銀河鉄道の夜』 (作家・古川日出男、詩人・管啓次郎、翻訳家・柴田元幸、小島ケイタニーラブ) としての活動を開始し、翌12年には朗読劇の主題歌「フォークダンス」を収録する弾き語り作品『小島敬太』(WEATHER/HEADZ)を発表。2013年には、東京芸術劇場での〈リミニ・プロトコル〉日本公演のサウンドデザインをゴンドウトモヒコ(pupa)と共に担当するなど活動の幅を広げている。2014年からRainy Day Bookstore & Cafe にて初の定期イベント「ラブナイト」を開始する。
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「あ。わ。の月」プロジェクト
月をキーワードとして、森羅万象の世界へ足を踏み入れようというプロジェクトです。「あ」は「はじまり」、「わ」は「おわり」のこと。「月」を知ることは命の「はじまり」と「おわり」と「はじまり」を知ることです。



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